投稿者: 村上 亮

  • なぜ製造業では同じ問題が繰り返されるのか ー 現象ではなく、構造を見るということ

    一見すると別々の問題

    このシリーズでは、

    製造業でよく見られる問題について考えてきました。

    改善しても改善しない。
    不良対策が繰り返される。
    会議が長い。
    意思決定が遅い。
    ベテランが辞めると現場が止まる。
    シミュレーションが活用されない。

    一見すると、
    それぞれ別々の問題のように見えます。

    実際、
    担当部署も異なります。
    改善活動は現場。
    不良対策は品質部門。
    会議は管理職。
    シミュレーションは技術部門。
    DXは情報システム部門。

    そのため、
    多くの会社では、
    それぞれを別々の問題として解決しようとします。

    しかし本当にそうでしょうか。

    共通する構造がある

    私は、
    これらの問題の背景には、
    共通する構造があるように感じています。

    例えば、
    改善が進まないとき。
    問題は改善不足ではありませんでした。
    問題設定が曖昧だったのです。

    不良対策が繰り返されるとき。
    問題は分析不足ではありませんでした。
    問題定義が曖昧だったのです。

    会議が長くなるとき。
    問題は議論不足ではありませんでした。
    判断基準が共有されていなかったのです。

    意思決定が遅くなるとき。
    問題は情報不足ではありませんでした。
    仮説が不足していたのです。

    ベテランが辞めると現場が止まるとき。
    問題は人材不足ではありませんでした。
    知識が構造化されていなかったのです。

    シミュレーションが使われなくなるとき。
    問題はツール不足ではありませんでした。
    活用目的が曖昧だったのです。

    つまり、
    それぞれの現象は違っていても、
    根本には共通点があります。

    前提が見えていない

    それは、
    前提が見えていない
    ということです。

    何を問題とするのか。
    何を優先するのか。
    何を成功とするのか。
    どの知識を残すのか。

    これらが曖昧なままでは、
    個別の対策を積み重ねても、
    同じ問題は繰り返されます。

    私は長年、
    シミュレーションや業務改善に携わってきました。

    その中で感じるのは、
    問題そのものよりも、
    問題を見る前提のほうが重要な場合があるということです。

    前提が変わると意思決定が変わる

    前提が変わると、
    見える問題が変わります。

    見える問題が変わると、
    議論が変わります。

    議論が変わると、
    意思決定が変わります。

    意思決定が変わると、
    行動が変わります。

    そして結果も変わります。

    だから私は、
    改善活動やDXの前に、
    まず前提を整えることが重要だと考えています。

    問題を解くことは大切です。

    しかしその前に、
    本当に解くべき問題は何なのか。

    その問いを持つことは、
    もっと大切なのかもしれません。

    さいごに

    製造業の現場では、
    今日もさまざまな問題が発生しています。

    その一つひとつを解決することも必要です。

    しかし時には、
    問題そのものではなく、
    問題の見方を見直してみる。

    それが、
    同じ問題を繰り返さないための第一歩になるのではないでしょうか。

    本シリーズでは、
    改善、不良対策、会議、意思決定、属人化、シミュレーションというテーマを取り上げました。

    それぞれ異なるテーマに見えましたが、
    振り返ってみると、

    すべて

    問題設定
    問題定義
    判断基準
    仮説
    知識化
    という一つの流れにつながっていました。

    そしてその土台にあるのが、
    前提を整えること
    です。

    製造業の問題を考えるとき、
    目の前の現象だけでなく、
    その背景にある前提にも目を向けてみる。

    それが、
    より良い意思決定への第一歩になるのではないでしょうか。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

    「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
    製造業・DX・意思決定に関する情報を発信しています。

    VXtyleでは、そうした思考の整理を行っています。

    VXtyleホームページ

  • なぜシミュレーションは買っても使われないのか ー ツール不足ではなく、活用目的が曖昧なのかもしれない

    導入時の期待と現実

    製造業では、
    シミュレーションソフトを導入したものの、
    思うように活用できていない
    という話を耳にすることがあります。

    導入時には大きな期待がありました。
    ・品質を向上したい
    ・試作回数を減らしたい
    ・開発期間を短縮したい
    ・技術伝承に活用したい

    しかし数年後、
    「結局あまり使われていない」
    「担当者しか触れない」
    「ライセンス更新を続けるべきか悩んでいる」
    という状況になることがあります。

    なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

    ソフトが悪いわけではない

    よく言われる理由は、
    ・操作が難しい
    ・人材が不足している
    ・教育が足りない
    といったものです。

    もちろんそれらも一因かもしれません。

    しかし私は、
    もっと根本的な理由があると思っています。

    それは、
    活用目的が曖昧だからです。

    例えば、設備投資であれば、
    ・品質向上
    ・コスト削減
    ・生産能力向上
    など、比較的明確な目的があります。

    しかしシミュレーションの場合、
    「とりあえず導入してみよう」
    という形で始まることがあります。

    すると、何を成功とするのかが曖昧になります。

    活用目的が曖昧になっていないか

    例えば、
    解析精度を高めることが目的なのか。
    試作回数を減らすことが目的なのか。
    技術伝承なのか。
    設計品質向上なのか。

    目的が曖昧なままでは、
    活用方法も定まりません。

    結果として、
    解析は行われる。
    レポートも作られる。
    しかし意思決定には活用されない。

    そんな状態が生まれます。

    私は長年シミュレーションに携わってきました。

    その中で感じるのは、
    シミュレーションの本当の価値は、
    計算結果そのものではないということです。

    シミュレーションは知識化の道具である

    もちろん、
    結果予測は重要です。

    しかしそれ以上に重要なのは、
    ・なぜその結果になったのか
    ・どの条件が影響したのか
    ・どのような仮説を検証したのか
    を整理できることです。

    つまり、
    シミュレーションとは、
    知識を見える形にする活動とも言えるのです。

    例えば、
    ベテラン技術者が持っている経験則を、
    モデルとして表現する。
    条件変更による影響を可視化する。
    成功事例や失敗事例を蓄積する。

    これらはすべて、
    知識の構造化です。

    私は、
    シミュレーションの本質は
    計算技術ではなく、
    知識化にあると思っています。

    そして実は、
    これはDXにも共通しています。

    DXが失敗するとき、
    多くの場合、
    システム導入そのものが目的になっています。

    しかし本来は、
    組織の知識を再利用できる形にすること
    が目的のはずです。

    シミュレーションも同じです。

    ソフトを導入することが目的ではありません。
    組織として学び続ける仕組みを作ることが目的です。

    さいごに

    もしシミュレーションが使われなくなっているとしたら、
    ソフトそのものではなく、
    私たちは何のために活用したかったのだろうか
    という問いから見直してみる必要があるかもしれません。

    ここまで、
    改善
    不良対策
    会議
    意思決定
    属人化
    シミュレーション
    というテーマを見てきました。

    一見すると別々の問題に見えます。

    しかし実は、
    そこには共通する構造があります。

    次回はシリーズ最終回として、
    「なぜ製造業では同じ問題が繰り返されるのか」
    について考えてみたいと思います。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

    「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
    製造業・DX・意思決定に関する情報を発信しています。

    VXtyleでは、そうした思考の整理を行っています。

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  • なぜベテランが辞めると現場が止まるのか ー 人材不足ではなく、知識が構造化されていないのかもしれない

    ベテラン退職への不安

    製造業では、
    ベテラン社員の退職が大きな課題として語られることがあります。

    「○○さんが辞めたら困る」
    「その人しか分からない仕事がある」
    「後継者が育っていない」

    こうした話はめずらしくありません。

    実際、
    長年現場を支えてきたベテランが退職すると、
    品質や生産性に影響が出ることがあります。

    では、
    なぜベテランが辞めると現場が止まるのでしょうか。

    人材不足が問題なのか

    よく言われるのは、
    人材不足です。

    もちろん、
    人手不足は現実の問題です。

    しかし私は、
    もっと本質的な理由があると思っています。

    それは、
    知識が構造化されていないことです。

    例えば、
    ベテラン社員はこんなことを言います。

    「経験で分かる」
    「見れば分かる」
    「感覚だよ」

    暗黙知はなぜ引き継げないのか

    本人にとっては自然な説明です。

    しかし、
    聞いている側からすると、
    何を見て、
    何を判断しているのかが分かりません。

    つまり、
    知識は存在している。

    しかし、
    他人が再利用できる形になっていないのです。

    これは知識がないのではありません。
    知識が構造化されていない状態です。

    例えば、
    熟練技術者が鋳造欠陥について、
    「この形状ならここに引け巣が出そうだ」
    と判断したとします。

    その判断は正しいかもしれません。

    しかし、
    なぜそう考えたのかが説明できなければ、
    技術は継承されません。

    本人が退職した瞬間に、
    知識も一緒に失われてしまいます。

    実は、
    これは個人の問題ではありません。

    組織の問題です。

    知識を個人に依存させたままにしているため、
    組織として再利用できないのです。

    知識を構造化するという発想

    私はシミュレーション技術に長く携わってきました。

    その中で感じるのは、
    シミュレーションとは単なる計算技術ではなく、
    熟練者の知識を見える形にする活動だということです。

    例えば、
    鋳造シミュレーションでは、
    ・どこに欠陥が出るか
    ・なぜ欠陥が出るか
    ・どうすれば改善できるか
    をモデル化します。

    これは、
    ベテランの頭の中にある経験則を、
    誰でも理解できる形に変換する作業とも言えます。

    つまり、
    シミュレーションは計算をしているのではなく、
    知識を構造化しているのです。

    私は、
    DXも同じだと思っています。

    DXというと、
    システム導入やデジタル化が注目されます。

    しかし本質は、
    組織の知識を再利用できる形にすることではないでしょうか。

    もしそうだとすれば、
    ベテランが辞めると現場が止まるのは、
    人材不足ではなく、
    知識を組織の資産に変換できていないから とも考えられます。

    さいごに

    ベテラン退職の問題を考えるとき、
    後継者探しの前に、
    一度考えてみてください。

    その知識は、誰でも使える形になっているだろうか。

    その問いが、
    属人化から組織知への第一歩になるかもしれません。

    次回は、
    知識化に関連するもう一つのテーマを取り上げます。

    シミュレーションを導入したにもかかわらず、
    十分に活用されない会社は少なくありません。

    なぜそのようなことが起きるのでしょうか。

    次回、
    「なぜシミュレーションは買っても使われないのか」
    について考えてみたいと思います。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

    「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
    製造業・DX・意思決定に関する情報を発信しています。

    VXtyleでは、そうした思考の整理を行っています。

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  • なぜ意思決定が遅くなるのか ー 情報不足ではなく、仮説不足かもしれない

    情報が足りないから決められないのか

    前回の記事では、会議が長くなる原因は
    「議論不足」ではなく、
    「判断基準不足」にあるのではないか、
    という話をしました。

    では、
    判断基準が決まっていても、
    なかなか決められない場合はどうでしょうか。

    製造業の現場でも、
    経営の場面でも、
    こんな言葉をよく耳にします。

    「もう少し情報を集めてから決めたい」
    「まだ判断材料が足りない」
    「データが揃ってから検討しよう」

    慎重な姿勢そのものは悪いことではありません。
    むしろ重要です。

    しかし、
    意思決定が遅い組織ほど、
    情報収集に時間を使い続ける傾向があります。

    情報収集には終わりがない

    なぜでしょうか。

    多くの場合、
    問題は情報不足ではなく、
    仮説不足にあります。

    例えば、
    新しい設備を導入するかどうかを考えるとします。

    このとき、
    仮説がない状態では、
    あらゆる情報が必要になります。

    設備価格
    保守費用
    生産能力
    品質影響
    電力消費
    競合事例
    補助金情報
    市場動向

    調べることは無限に出てきます。

    そして、
    情報が増えるほど、
    かえって決められなくなります。

    なぜなら、何を知りたいのかが決まっていないからです。

    仮説が情報収集の方向を決める

    一方、
    仮説がある場合はどうでしょうか。

    例えば、
    この設備導入によって不良率を半減できるのではないか
    という仮説があれば、
    確認すべき情報は絞られます。

    つまり、
    仮説は情報収集の方向を決める役割を持っています。

    私はシミュレーション活用の場面でも、
    同じことを何度も見てきました。

    解析そのものは数日で終わる。

    しかし、
    何を知りたいのかが決まっていないため、
    何度も条件を変えて計算を繰り返す。

    結果として、
    大量のデータは手に入るのに、
    意思決定にはつながらない。

    これは、
    シミュレーションの問題ではありません。
    仮説がないまま情報を集めていることが原因です。

    優れた意思決定者の共通点

    実際、
    優れた意思決定者ほど、
    最初から正解を知っているわけではありません。

    むしろ、
    まず仮説を立てる

    仮説を検証するために情報を集める

    判断する
    という流れを取っています。

    つまり、
    情報収集は目的ではなく、
    意思決定のための手段なのです。

    もちろん、
    仮説は間違っていることもあります。

    しかし、
    間違った仮説でも、
    仮説がない状態よりは前に進めます。

    なぜなら、
    何を確認すればよいかが明確になるからです。

    意思決定が遅くなる組織では、
    情報が不足しているのではなく、
    仮説が不足している。
    私はそう感じる場面が少なくありません。

    さいごに

    もし、
    「なかなか決められない」
    と感じたときは、
    情報の量を増やす前に、
    一度考えてみてください。

    私たちはどんな仮説を持っているだろうか。

    その問いが、
    意思決定のスピードと質を変えるきっかけになるかもしれません。

    ここまで、
    改善
    不良対策
    会議
    意思決定

    というテーマを見てきました。

    次回からは、
    属人化やDXにも共通する
    「知識の構造化」
    について考えていきます。

    まずは、
    「なぜベテランが辞めると現場が止まるのか」
    をテーマに取り上げます。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

    「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
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    VXtyleでは、そうした思考の整理を行っています。

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  • なぜ会議が長くなるのか ー 議論が足りないのではなく、判断基準が足りない

    なぜ会議は長くなるのか

    製造業に限らず、多くの会社で聞かれる悩みがあります。

    それは、
    会議が長い
    という問題です。

    会議の予定時間は1時間。
    しかし気が付くと90分、2時間と延びていく。

    参加者は疲れ、
    結論も曖昧なまま終了する。

    そんな経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。

    会議が長くなる原因として、よく言われるのは
    ・発言が多すぎる
    ・脱線が多い
    ・司会進行が悪い
    いったものです。

    議論が足りないわけではない

    もちろん、それらも原因の一つかもしれません。

    しかし私は、
    もっと根本的な理由があると思っています。

    それは、
    判断基準が共有されていない
    ことです。

    例えば、
    設備投資について議論するとします。

    Aさんは
    「品質向上」を重視している。

    Bさんは
    「コスト削減」を重視している。

    Cさんは
    「納期短縮」を重視している。

    すると、
    それぞれの意見は合理的なのに、
    結論が出ません。

    なぜなら、
    どの基準で判断するかが決まっていないからです。

    判断基準が共有されていない

    会議の場では、
    意見の違いが問題だと思われがちです。

    しかし実際には、
    意見が違うこと自体は自然なことです。

    本当に問題なのは、
    何を優先するか
    が決まっていないことです。

    判断基準が共有されていない状態では、
    議論はどこまでも続きます。

    なぜなら、
    参加者はそれぞれ異なる物差しを使っているからです。

    これは品質会議でも同じです。

    ある人は
    「不良率を下げたい」

    ある人は
    「生産量を維持したい」

    ある人は
    「コストを増やしたくない」

    どれも正しい。

    しかし、
    優先順位が決まっていなければ、
    結論は出ません。

    会議で本当に決めるべきこと

    私はシミュレーション導入支援の場面でも、
    同じことを見てきました。

    導入するかどうかの議論が延々と続く。

    よく聞いてみると、参加者ごとに
    ・品質向上
    ・開発期間短縮
    ・技術継承
    ・コスト削減
    と期待するものが違う。

    つまり、
    シミュレーションの良し悪しを議論しているようで、
    実際には
    何を重視するか
    を議論しているのです。

    この状態では、
    どれだけ会議を続けても結論は出ません。

    だから私は、
    会議を短くするために必要なのは、
    発言を減らすことではなく、
    判断基準を明確にすること
    だと考えています。

    何を優先するのか。
    何を成功とするのか。
    何を諦めるのか。

    これが決まれば、
    会議は驚くほど短くなります。

    逆に、
    判断基準が曖昧なままでは、
    どれだけ優秀な人が集まっても、
    議論は終わりません。

    さいごに

    会議が長いと感じたとき、
    進行方法を見直す前に、
    一度考えてみてください。

    私たちは同じ基準で判断しようとしているだろうか。

    会議の長さは、
    発言量ではなく、
    判断基準の曖昧さを映しているのかもしれません。

    そして実は、
    判断基準が共有されていても、
    意思決定が遅くなることがあります。

    そのとき多くの人は、
    「情報が足りないから決められない」
    と言います。

    しかし本当にそうなのでしょうか。

    次回は、
    「なぜ意思決定が遅くなるのか」
    をテーマに考えてみたいと思います。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

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  • なぜ不良対策は繰り返されるのか ー 真因分析の前に、問題を定義できているだろうか

    不良対策をしても再発する

    製造業では、不良対策は日常的な活動の一つです。

    不良が発生すれば、

    ・現象を確認する
    ・原因を分析する
    ・対策を実施する
    ・効果を確認する

    という流れで改善活動が進められます。

    しかし、
    多くの現場でこんな経験があるのではないでしょうか。

    ・対策したはずなのに再発した
    ・別の工程で同じ問題が起きた
    ・何度も同じテーマが会議に上がる

    なぜ不良対策は繰り返されるのでしょうか。

    真因分析だけでは解決しない

    よく言われるのは、

    「真因分析が足りない」

    という説明です。

    そのため、

    ・なぜなぜ分析を徹底する
    ・データをもっと集める
    ・原因分析手法を学ぶ

    といった改善が行われます。

    もちろん、これらは大切です。

    しかし私は、
    真因分析そのものより前に考えるべきことがあると思っています。

    私たちは同じ問題を見ているのだろうか

    それは、
    私たちは本当に同じ問題を見ているのだろうか
    という問いです。

    例えば、
    鋳造品に欠陥が発生したとします。

    現場では
    「欠陥を減らすこと」
    が問題として設定されます。

    その結果、
    ・作業条件を変更する
    ・モニタリングを強化する
    ・教育を行う
    といった対策が実施されます。

    しかし、
    もし顧客が本当に困っているのが
    「欠陥そのもの」ではなく、
    「納期遅延」だったらどうでしょうか。

    あるいは、
    歩留まりの低下だったらどうでしょうか。

    その場合、
    現場は正しい対策を実施しているにもかかわらず、
    本当に解くべき問題には近づいていないことになります。

    問題定義がズレると対策もズレる

    つまり、
    原因分析を行う前に、そもそも
    「何を問題とするのか」
    が整理されていない可能性があるのです。

    不良対策の現場では、
    原因分析には多くの時間が使われます。

    一方で、
    問題定義について議論されることはそれほど多くありません。

    しかし、
    問題定義がズレていると、
    どれだけ優れた分析を行っても、
    解決策はズレていきます。

    私はシミュレーション業務に携わる中で、
    「計算は正しいのに役に立たない」
    という場面を何度も見てきました。

    原因を調べる技術は高い。
    解析も正しい。

    しかし、
    何を解決したいのかが曖昧なため、
    成果につながらない。

    これは不良対策でも同じです。

    問題定義が曖昧なままでは、
    真因分析は正しい答えを出しても、
    望んだ結果にはつながりません。

    だから私は、
    不良対策において重要なのは、
    「真因分析を深くすること」だけではなく、
    その前に
    「何を問題とするのか」 を明確にすることだと考えています。

    さいごに

    不良対策が繰り返されるとき、
    分析手法を疑う前に、
    一度立ち止まって考えてみてください。

    私たちは同じ問題を見ているのだろうか。

    その問いが、
    改善活動の質を変えるきっかけになるかもしれません。

    次回は、
    その問題定義や意思決定を行う場であるにもかかわらず、
    多くの会社で長時間化している

    「なぜ会議が長くなるのか」

    について考えてみたいと思います。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

    「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
    製造業・DX・意思決定に関する情報を発信しています。

    VXtyleでは、そうした思考の整理を行っています。

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  • なぜ改善しても改善しないのか ー 問題を解く前に、問題を疑ってみる

    改善しているのに成果が出ない

    製造業の現場では、日々さまざまな改善活動が行われています。

    不良低減、コスト削減、納期短縮、生産性向上。

    改善提案制度やQC活動、5S活動など、
    改善そのものに力を入れている会社も少なくありません。

    しかしその一方で、

    「改善しているはずなのに成果が出ない」
    「同じ問題が何度も繰り返される」
    「改善活動そのものが形骸化している」

    という声もよく耳にします。

    なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

    改善不足が原因なのか

    多くの場合、その理由は
    「改善が足りないから」
    ではありません。

    むしろ、
    改善する対象そのものがズレている
    ことがあります。

    例えば、
    不良率が高いという問題が発生したとします。

    そこで現場では、

    ・作業手順を見直す
    ・チェック項目を増やす
    ・教育を強化する

    といった改善策が実施されます。

    もちろん、これらは大切な活動です。

    しかし、そもそも
    「本当に現場作業が原因なのか」
    という問いは十分に行われているでしょうか。

    問題設定そのものを疑う

    実際には、

    ・設計条件
    ・材料選定
    ・生産計画
    ・顧客要求

    など、現場の外側に原因が存在することもあります。

    にもかかわらず、
    「不良=現場の問題」
    という前提で改善を進めると、
    いくら頑張っても成果は限定的になります。

    これは不良問題に限りません。

    納期遅延であれば、
    「現場が遅い」
    という前提で改善が始まることがあります。

    しかし実際には、

    ・頻繁な仕様変更
    ・無理な受注
    ・計画変更

    が原因かもしれません。

    つまり、
    改善活動そのものが悪いのではなく、
    改善の前提となる問題設定がズレている のです。

    問題設定が変わると対策も変わる

    改善活動というと、
    「どう解決するか」
    に意識が向きがちです。

    しかしその前に、
    「何が問題なのか」
    を見直す必要があります。

    私は製造業におけるシミュレーション活用や業務改善に携わる中で、
    問題解決よりも先に、
    問題設定が重要だと感じる場面を何度も見てきました。

    例えば、
    シミュレーション結果と実測結果が合わないという相談を受けることがあります。

    そのとき、多くの場合は
    「解析精度を上げたい」
    という話になります。

    そこで、
    メッシュを細かくする、
    計算条件を見直す、
    といった改善が検討されます。

    しかし、
    そもそもシミュレーションが対象としている現象と、
    実際に起きている現象が異なっていたらどうでしょうか。

    その場合、
    どれだけ計算精度を上げても、
    期待する結果には近づきません。

    これは現場改善にも似ています。

    改善策そのものが悪いのではなく、
    改善の対象としている問題がズレているのです。

    問題設定が変われば、
    見るべきデータも、
    議論すべき内容も、
    選ぶべき対策も変わります。

    さいごに

    改善が進まないとき、
    改善策を増やす前に、
    一度立ち止まって考えてみてください。

    「そもそも私たちは、何を問題だと思っているのだろうか。」

    その問いから始めることで、
    改善の質は大きく変わるかもしれません。

    しかし実際の現場では、
    問題を正しく設定したつもりでも、
    同じ不良やトラブルが繰り返されることがあります。

    次回は、
    「なぜ不良対策は繰り返されるのか」
    について考えてみたいと思います。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

    「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
    製造業・DX・意思決定に関する情報を発信しています。

    VXtyleでは、そうした思考の整理を行っています。

    VXtyleホームページ

  • 前提を整えるための具体ステップ ー 製造業の意思決定を変える4つのプロセス

    では、どうすればよいのか

    これまで見てきたように、

    • 前提はズレやすく
    • ズレると結果もズレる

    という構造があります。

    では実際に、
    どのようにすれば前提を整えることができるのでしょうか。

    ここでは、現場でも実践可能な形で、
    そのプロセスを整理してみます。

    4つのステップ

    前提を整えるプロセスは、次の4つに分けることができます。

    1. 現象を分離する
    2. 問題を定義し直す
    3. 前提を言語化する
    4. 前提を再設計する

    一見するとシンプルですが、
    この順番が重要です。

    ステップ①:現象を分離する

    最初に行うのは、

    「起きていること」と「解釈」を分けること

    です。

    例えば、

    「不良が多い」という言葉の中には、

    • 実際の不良発生状況(事実)
    • 原因に対する仮説(解釈)

    が混ざっています。

    ここを分けずに議論を進めると、
    前提のズレに気づくことができません。

    ステップ②:問題を定義し直す

    次に、

    本当に解くべき問題は何か

    を見直します。

    例えば、

    「不良を減らす」という問題設定が、
    本当に適切なのかを問い直します。

    場合によっては、

    • 設計条件の見直し
    • 品質基準の再設定
    • 顧客要求の再確認

    といった方向に問題が移ることもあります。

    ステップ③:前提を言語化する

    ここが最も重要なステップです。

    多くの場合、前提は暗黙のまま扱われています。

    そのため、

    前提を「言葉にする」こと

    が必要になります。

    例えば、

    • なぜこの品質基準なのか
    • なぜこの工程設計なのか
    • なぜこのKPIを追っているのか

    といった問いを通じて、
    前提を明らかにしていきます。

    ステップ④:前提を再設計する

    最後に、

    その前提は今も有効なのか

    を検討し、必要に応じて再設計します。

    ここで重要なのは、

    • 変えるべき前提
    • 変えてはいけない前提

    を見極めることです。

    すべてを変える必要はありませんが、
    見直すべき前提は必ず存在します。

    実践のポイント:一人でやらない

    前提を整えるプロセスは、
    一人で行うのが難しい作業でもあります。

    なぜなら、

    前提そのものが「当たり前」になっている

    ためです。

    そのため、

    • 異なる立場の人と議論する
    • 外部の視点を取り入れる

    といった工夫が有効になります。

    よくある落とし穴

    実践にあたって、よくあるのが次のようなケースです。

    • いきなり対策を考えてしまう
    • 前提を疑うことに抵抗がある
    • 言語化が曖昧なまま進む

    これらはすべて、

    プロセスを飛ばしてしまうこと

    に起因しています。

    まとめ:前提は「整えるもの」

    前提は、自然に整うものではありません。

    むしろ、

    意識的に扱わなければ、ズレ続けるもの

    です。

    だからこそ、

    • 分離する
    • 定義する
    • 言語化する
    • 再設計する

    というプロセスを通じて、
    前提を整えていくことが重要になります。

    さいごに

    改善やDXに取り組む際、

    「何をやるか」だけでなく、
    「何を前提としているか」に目を向ける。

    それだけで、
    意思決定の精度は大きく変わります。

    前提を整えることは、
    特別な手法ではなく、
    より良い判断を行うための基本動作です。

    小さなテーマからでも、
    このプロセスを試してみていただければと思います。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

    「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
    製造業・DX・意思決定に関する情報を発信しています。

    VXtyleでは、そうした思考の整理を行っています。

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  • 前提がズレると何が起きるのか ー 不良・コスト・DXがうまくいかない構造

    なぜ同じ問題が繰り返されるのか

    現場で改善活動を続けているにもかかわらず、

    • 同じ不良が繰り返される
    • コスト削減しても利益が伸びない
    • DXを進めても現場が定着しない

    といった状況に直面することがあります。

    一つひとつの対策は間違っていないはずなのに、
    なぜ結果がついてこないのでしょうか。

    対策ではなく「構造」の問題

    このような場合、

    「対策が弱いのではないか」
    「実行が足りないのではないか」

    と考えがちです。

    しかし実際には、

    対策の問題ではなく、
    その前にある“前提のズレ”が影響している

    ケースが少なくありません。

    前提がズレたままでは、
    どれだけ対策を積み重ねても、
    結果は同じ方向に収束してしまいます。

    対策しても効果が出ない

    例えば、不良率が高い場合。

    一般的には、

    • 工程条件の見直し
    • 作業手順の改善
    • 設備の調整

    といった対策が行われます。

    しかし前提がズレていると、

    「改善しているのに変わらない」

    という状態になります。 原因が工程ではなく、
    設計や条件設定にある場合、
    工程をいくら改善しても効果は限定的です。

    部分最適が全体を悪化させる

    前提がズレると、

    部分最適が積み重なり、全体最適から離れる

    という現象も起きます。

    例えば、

    • 製造は作りやすさを追求
    • 設計は性能を優先
    • 品質は基準遵守を徹底

    それぞれは正しい取り組みですが、
    前提が揃っていないと、

    • コストが増える
    • リードタイムが伸びる
    • 手戻りが増える

    といった結果につながります。

    DXが「追加業務」になる

    DXにおいても同様です。

    • システムを導入する
    • データを可視化する
    • ツールを増やす

    しかし前提が整理されていないと、

    DXが業務改善ではなく「業務追加」になる

    という状況が生まれます。

    つまり、

    • 本来解決すべき問題が曖昧なまま
    • 手段だけが先行してしまう

    状態です。

    すべては「同じ構造」

    ここまでの現象は一見バラバラに見えますが、
    実は同じ構造を持っています。

    それは、

    前提がズレたまま、問題と対策が進んでいる

    という点です。

    この状態では、

    • 正しい対策をしてもズレる
    • 努力しても成果につながらない

    ということが起きます。

    前提が整うと何が変わるか

    では、前提が整うと何が変わるのでしょうか。

    最も大きな変化は、

    問題の見え方が変わること

    です。

    例えば、

    • 工程の問題 → 設計の問題
    • 作業の問題 → 情報の問題
    • 現場の問題 → 全体構造の問題

    といったように、
    「打つべき手」そのものが変わります。

    ズレは努力では埋まらない

    ここで重要なのは、

    前提のズレは、努力では解消できない

    という点です。

    むしろ、

    努力すればするほどズレが強化されることもあります。

    だからこそ、

    • まず立ち止まる
    • 前提を見直す
    • 問題を再定義する

    というプロセスが重要になります。

    さいごに

    不良、コスト、DX。
    どのテーマであっても、

    うまくいかないときは
    「対策」ではなく「前提」に目を向ける。

    それだけで、
    同じ状況でもまったく違う打ち手が見えてくることがあります。 前提を整えることは、
    遠回りのようでいて、
    最も本質的な改善への近道なのかもしれません。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

    「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
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  • なぜ製造業では前提がズレやすいのか ー 改善しても成果が出ない本当の理由

    なぜ改善しても変わらないのか

    製造業の現場では、日々さまざまな改善活動が行われています。

    不良低減、コスト削減、納期短縮。
    どれも重要であり、多くの企業が真剣に取り組んでいます。

    それにもかかわらず、

    • 改善しているのに成果が出ない
    • むしろ複雑になってしまう
    • 同じ問題が何度も繰り返される

    といった状況に直面することがあります。

    なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。

    その改善、本当に意味がありますか?

    解き方ではなく「前提」の問題

    こうした状況では、多くの場合

    「対策が足りない」
    「実行力が弱い」

    といった議論になりがちです。

    しかし実際には、

    問題の“解き方”ではなく、
    “前提”そのものがズレている

    ケースが少なくありません。

    ではなぜ、
    製造業ではこの「前提のズレ」が起きやすいのでしょうか。

    過去の成功体験が強い

    製造業は、長年の改善の積み重ねによって成長してきました。

    現場には多くのノウハウがあり、
    過去の成功体験が蓄積されています。

    これは大きな強みである一方で、

    「これまでうまくいっていた前提」

    が無意識に固定化される要因にもなります。

    環境や条件が変わっていても、
    前提だけが過去のまま残ってしまう。

    その結果、現実とのズレが生まれます。

    部分最適の構造

    製造業では、

    • 設計
    • 生産技術
    • 製造
    • 品質

    といった機能ごとに分業されています。

    それぞれの部門が最適化を進めることで、
    全体の効率を高めてきました。

    しかしこの構造は、

    「部門ごとの前提」がバラバラに存在する

    状態を生みやすくなります。

    例えば、

    • 設計は性能を重視
    • 製造は作りやすさを重視
    • 品質は基準遵守を重視

    といったように、
    同じ対象でも見ている前提が異なります。

    このズレが、意思決定のズレにつながります。

    KPIが前提を固定する

    もう一つの要因がKPIです。

    KPIは本来、活動を可視化し、
    改善を促進するためのものです。

    しかし一方で、

    「KPIそのものが前提になる」

    という現象が起きます。

    例えば、

    • 不良率を下げる
    • コストを削減する

    といった指標が絶対視されると、

    「それが本当に最適なのか?」
    という問いが生まれにくくなります。

    結果として、
    前提を見直す機会が失われていきます。

    前提は「見えない」

    ここまで見てきたように、

    • 成功体験
    • 分業構造
    • KPI

    といった要因が重なることで、
    前提は徐々に固定化されていきます。

    そして最も重要なのは、

    前提は普段、意識されない

    という点です。

    問題や対策は議論されても、
    その前にある前提は“当たり前”として扱われる。

    だからこそ、ズレても気づきにくいのです。

    前提を扱うということ

    では、どうすればよいのでしょうか。

    重要なのは、

    前提そのものを“対象として扱う”こと

    です。

    つまり、

    • 何を問題としているのか
    • なぜそれを問題とみなしているのか
    • その前提は今も有効なのか

    といった問いを持つことです。

    これは特別な技術ではなく、
    意思決定の一段手前に立ち返る行為です。

    ズレは自然に起きる

    製造業において前提がズレやすいのは、
    決して特別な問題ではありません。

    むしろ、

    • 強み(成功体験)
    • 構造(分業)
    • 仕組み(KPI)

    があるからこそ、自然に起きる現象です。

    だからこそ重要なのは、

    前提はズレるものだと理解し、
    意識的に見直すこと
    です。

    さいごに

    改善やDXに取り組む前に、
    一度立ち止まって前提を見直す。

    それだけで、
    同じ問題でも見え方が大きく変わることがあります。

    前提を整えることは特別なことではなく、
    意思決定の質を高めるための基本動作なのかもしれません。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

    「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
    製造業・DX・意思決定に関する情報を発信しています。

    VXtyleでは、そうした思考の整理を行っています。

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