タグ: 意思決定

  • なぜ製造業では同じ問題が繰り返されるのか ー 現象ではなく、構造を見るということ

    一見すると別々の問題

    このシリーズでは、

    製造業でよく見られる問題について考えてきました。

    改善しても改善しない。
    不良対策が繰り返される。
    会議が長い。
    意思決定が遅い。
    ベテランが辞めると現場が止まる。
    シミュレーションが活用されない。

    一見すると、
    それぞれ別々の問題のように見えます。

    実際、
    担当部署も異なります。
    改善活動は現場。
    不良対策は品質部門。
    会議は管理職。
    シミュレーションは技術部門。
    DXは情報システム部門。

    そのため、
    多くの会社では、
    それぞれを別々の問題として解決しようとします。

    しかし本当にそうでしょうか。

    共通する構造がある

    私は、
    これらの問題の背景には、
    共通する構造があるように感じています。

    例えば、
    改善が進まないとき。
    問題は改善不足ではありませんでした。
    問題設定が曖昧だったのです。

    不良対策が繰り返されるとき。
    問題は分析不足ではありませんでした。
    問題定義が曖昧だったのです。

    会議が長くなるとき。
    問題は議論不足ではありませんでした。
    判断基準が共有されていなかったのです。

    意思決定が遅くなるとき。
    問題は情報不足ではありませんでした。
    仮説が不足していたのです。

    ベテランが辞めると現場が止まるとき。
    問題は人材不足ではありませんでした。
    知識が構造化されていなかったのです。

    シミュレーションが使われなくなるとき。
    問題はツール不足ではありませんでした。
    活用目的が曖昧だったのです。

    つまり、
    それぞれの現象は違っていても、
    根本には共通点があります。

    前提が見えていない

    それは、
    前提が見えていない
    ということです。

    何を問題とするのか。
    何を優先するのか。
    何を成功とするのか。
    どの知識を残すのか。

    これらが曖昧なままでは、
    個別の対策を積み重ねても、
    同じ問題は繰り返されます。

    私は長年、
    シミュレーションや業務改善に携わってきました。

    その中で感じるのは、
    問題そのものよりも、
    問題を見る前提のほうが重要な場合があるということです。

    前提が変わると意思決定が変わる

    前提が変わると、
    見える問題が変わります。

    見える問題が変わると、
    議論が変わります。

    議論が変わると、
    意思決定が変わります。

    意思決定が変わると、
    行動が変わります。

    そして結果も変わります。

    だから私は、
    改善活動やDXの前に、
    まず前提を整えることが重要だと考えています。

    問題を解くことは大切です。

    しかしその前に、
    本当に解くべき問題は何なのか。

    その問いを持つことは、
    もっと大切なのかもしれません。

    さいごに

    製造業の現場では、
    今日もさまざまな問題が発生しています。

    その一つひとつを解決することも必要です。

    しかし時には、
    問題そのものではなく、
    問題の見方を見直してみる。

    それが、
    同じ問題を繰り返さないための第一歩になるのではないでしょうか。

    本シリーズでは、
    改善、不良対策、会議、意思決定、属人化、シミュレーションというテーマを取り上げました。

    それぞれ異なるテーマに見えましたが、
    振り返ってみると、

    すべて

    問題設定
    問題定義
    判断基準
    仮説
    知識化
    という一つの流れにつながっていました。

    そしてその土台にあるのが、
    前提を整えること
    です。

    製造業の問題を考えるとき、
    目の前の現象だけでなく、
    その背景にある前提にも目を向けてみる。

    それが、
    より良い意思決定への第一歩になるのではないでしょうか。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

    「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
    製造業・DX・意思決定に関する情報を発信しています。

    VXtyleでは、そうした思考の整理を行っています。

    VXtyleホームページ

  • なぜ意思決定が遅くなるのか ー 情報不足ではなく、仮説不足かもしれない

    情報が足りないから決められないのか

    前回の記事では、会議が長くなる原因は
    「議論不足」ではなく、
    「判断基準不足」にあるのではないか、
    という話をしました。

    では、
    判断基準が決まっていても、
    なかなか決められない場合はどうでしょうか。

    製造業の現場でも、
    経営の場面でも、
    こんな言葉をよく耳にします。

    「もう少し情報を集めてから決めたい」
    「まだ判断材料が足りない」
    「データが揃ってから検討しよう」

    慎重な姿勢そのものは悪いことではありません。
    むしろ重要です。

    しかし、
    意思決定が遅い組織ほど、
    情報収集に時間を使い続ける傾向があります。

    情報収集には終わりがない

    なぜでしょうか。

    多くの場合、
    問題は情報不足ではなく、
    仮説不足にあります。

    例えば、
    新しい設備を導入するかどうかを考えるとします。

    このとき、
    仮説がない状態では、
    あらゆる情報が必要になります。

    設備価格
    保守費用
    生産能力
    品質影響
    電力消費
    競合事例
    補助金情報
    市場動向

    調べることは無限に出てきます。

    そして、
    情報が増えるほど、
    かえって決められなくなります。

    なぜなら、何を知りたいのかが決まっていないからです。

    仮説が情報収集の方向を決める

    一方、
    仮説がある場合はどうでしょうか。

    例えば、
    この設備導入によって不良率を半減できるのではないか
    という仮説があれば、
    確認すべき情報は絞られます。

    つまり、
    仮説は情報収集の方向を決める役割を持っています。

    私はシミュレーション活用の場面でも、
    同じことを何度も見てきました。

    解析そのものは数日で終わる。

    しかし、
    何を知りたいのかが決まっていないため、
    何度も条件を変えて計算を繰り返す。

    結果として、
    大量のデータは手に入るのに、
    意思決定にはつながらない。

    これは、
    シミュレーションの問題ではありません。
    仮説がないまま情報を集めていることが原因です。

    優れた意思決定者の共通点

    実際、
    優れた意思決定者ほど、
    最初から正解を知っているわけではありません。

    むしろ、
    まず仮説を立てる

    仮説を検証するために情報を集める

    判断する
    という流れを取っています。

    つまり、
    情報収集は目的ではなく、
    意思決定のための手段なのです。

    もちろん、
    仮説は間違っていることもあります。

    しかし、
    間違った仮説でも、
    仮説がない状態よりは前に進めます。

    なぜなら、
    何を確認すればよいかが明確になるからです。

    意思決定が遅くなる組織では、
    情報が不足しているのではなく、
    仮説が不足している。
    私はそう感じる場面が少なくありません。

    さいごに

    もし、
    「なかなか決められない」
    と感じたときは、
    情報の量を増やす前に、
    一度考えてみてください。

    私たちはどんな仮説を持っているだろうか。

    その問いが、
    意思決定のスピードと質を変えるきっかけになるかもしれません。

    ここまで、
    改善
    不良対策
    会議
    意思決定

    というテーマを見てきました。

    次回からは、
    属人化やDXにも共通する
    「知識の構造化」
    について考えていきます。

    まずは、
    「なぜベテランが辞めると現場が止まるのか」
    をテーマに取り上げます。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

    「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
    製造業・DX・意思決定に関する情報を発信しています。

    VXtyleでは、そうした思考の整理を行っています。

    VXtyleホームページ

  • なぜ会議が長くなるのか ー 議論が足りないのではなく、判断基準が足りない

    なぜ会議は長くなるのか

    製造業に限らず、多くの会社で聞かれる悩みがあります。

    それは、
    会議が長い
    という問題です。

    会議の予定時間は1時間。
    しかし気が付くと90分、2時間と延びていく。

    参加者は疲れ、
    結論も曖昧なまま終了する。

    そんな経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。

    会議が長くなる原因として、よく言われるのは
    ・発言が多すぎる
    ・脱線が多い
    ・司会進行が悪い
    いったものです。

    議論が足りないわけではない

    もちろん、それらも原因の一つかもしれません。

    しかし私は、
    もっと根本的な理由があると思っています。

    それは、
    判断基準が共有されていない
    ことです。

    例えば、
    設備投資について議論するとします。

    Aさんは
    「品質向上」を重視している。

    Bさんは
    「コスト削減」を重視している。

    Cさんは
    「納期短縮」を重視している。

    すると、
    それぞれの意見は合理的なのに、
    結論が出ません。

    なぜなら、
    どの基準で判断するかが決まっていないからです。

    判断基準が共有されていない

    会議の場では、
    意見の違いが問題だと思われがちです。

    しかし実際には、
    意見が違うこと自体は自然なことです。

    本当に問題なのは、
    何を優先するか
    が決まっていないことです。

    判断基準が共有されていない状態では、
    議論はどこまでも続きます。

    なぜなら、
    参加者はそれぞれ異なる物差しを使っているからです。

    これは品質会議でも同じです。

    ある人は
    「不良率を下げたい」

    ある人は
    「生産量を維持したい」

    ある人は
    「コストを増やしたくない」

    どれも正しい。

    しかし、
    優先順位が決まっていなければ、
    結論は出ません。

    会議で本当に決めるべきこと

    私はシミュレーション導入支援の場面でも、
    同じことを見てきました。

    導入するかどうかの議論が延々と続く。

    よく聞いてみると、参加者ごとに
    ・品質向上
    ・開発期間短縮
    ・技術継承
    ・コスト削減
    と期待するものが違う。

    つまり、
    シミュレーションの良し悪しを議論しているようで、
    実際には
    何を重視するか
    を議論しているのです。

    この状態では、
    どれだけ会議を続けても結論は出ません。

    だから私は、
    会議を短くするために必要なのは、
    発言を減らすことではなく、
    判断基準を明確にすること
    だと考えています。

    何を優先するのか。
    何を成功とするのか。
    何を諦めるのか。

    これが決まれば、
    会議は驚くほど短くなります。

    逆に、
    判断基準が曖昧なままでは、
    どれだけ優秀な人が集まっても、
    議論は終わりません。

    さいごに

    会議が長いと感じたとき、
    進行方法を見直す前に、
    一度考えてみてください。

    私たちは同じ基準で判断しようとしているだろうか。

    会議の長さは、
    発言量ではなく、
    判断基準の曖昧さを映しているのかもしれません。

    そして実は、
    判断基準が共有されていても、
    意思決定が遅くなることがあります。

    そのとき多くの人は、
    「情報が足りないから決められない」
    と言います。

    しかし本当にそうなのでしょうか。

    次回は、
    「なぜ意思決定が遅くなるのか」
    をテーマに考えてみたいと思います。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

    「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
    製造業・DX・意思決定に関する情報を発信しています。

    VXtyleでは、そうした思考の整理を行っています。

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  • 前提を整えるための具体ステップ ー 製造業の意思決定を変える4つのプロセス

    では、どうすればよいのか

    これまで見てきたように、

    • 前提はズレやすく
    • ズレると結果もズレる

    という構造があります。

    では実際に、
    どのようにすれば前提を整えることができるのでしょうか。

    ここでは、現場でも実践可能な形で、
    そのプロセスを整理してみます。

    4つのステップ

    前提を整えるプロセスは、次の4つに分けることができます。

    1. 現象を分離する
    2. 問題を定義し直す
    3. 前提を言語化する
    4. 前提を再設計する

    一見するとシンプルですが、
    この順番が重要です。

    ステップ①:現象を分離する

    最初に行うのは、

    「起きていること」と「解釈」を分けること

    です。

    例えば、

    「不良が多い」という言葉の中には、

    • 実際の不良発生状況(事実)
    • 原因に対する仮説(解釈)

    が混ざっています。

    ここを分けずに議論を進めると、
    前提のズレに気づくことができません。

    ステップ②:問題を定義し直す

    次に、

    本当に解くべき問題は何か

    を見直します。

    例えば、

    「不良を減らす」という問題設定が、
    本当に適切なのかを問い直します。

    場合によっては、

    • 設計条件の見直し
    • 品質基準の再設定
    • 顧客要求の再確認

    といった方向に問題が移ることもあります。

    ステップ③:前提を言語化する

    ここが最も重要なステップです。

    多くの場合、前提は暗黙のまま扱われています。

    そのため、

    前提を「言葉にする」こと

    が必要になります。

    例えば、

    • なぜこの品質基準なのか
    • なぜこの工程設計なのか
    • なぜこのKPIを追っているのか

    といった問いを通じて、
    前提を明らかにしていきます。

    ステップ④:前提を再設計する

    最後に、

    その前提は今も有効なのか

    を検討し、必要に応じて再設計します。

    ここで重要なのは、

    • 変えるべき前提
    • 変えてはいけない前提

    を見極めることです。

    すべてを変える必要はありませんが、
    見直すべき前提は必ず存在します。

    実践のポイント:一人でやらない

    前提を整えるプロセスは、
    一人で行うのが難しい作業でもあります。

    なぜなら、

    前提そのものが「当たり前」になっている

    ためです。

    そのため、

    • 異なる立場の人と議論する
    • 外部の視点を取り入れる

    といった工夫が有効になります。

    よくある落とし穴

    実践にあたって、よくあるのが次のようなケースです。

    • いきなり対策を考えてしまう
    • 前提を疑うことに抵抗がある
    • 言語化が曖昧なまま進む

    これらはすべて、

    プロセスを飛ばしてしまうこと

    に起因しています。

    まとめ:前提は「整えるもの」

    前提は、自然に整うものではありません。

    むしろ、

    意識的に扱わなければ、ズレ続けるもの

    です。

    だからこそ、

    • 分離する
    • 定義する
    • 言語化する
    • 再設計する

    というプロセスを通じて、
    前提を整えていくことが重要になります。

    さいごに

    改善やDXに取り組む際、

    「何をやるか」だけでなく、
    「何を前提としているか」に目を向ける。

    それだけで、
    意思決定の精度は大きく変わります。

    前提を整えることは、
    特別な手法ではなく、
    より良い判断を行うための基本動作です。

    小さなテーマからでも、
    このプロセスを試してみていただければと思います。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

    「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
    製造業・DX・意思決定に関する情報を発信しています。

    VXtyleでは、そうした思考の整理を行っています。

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  • 前提がズレると何が起きるのか ー 不良・コスト・DXがうまくいかない構造

    なぜ同じ問題が繰り返されるのか

    現場で改善活動を続けているにもかかわらず、

    • 同じ不良が繰り返される
    • コスト削減しても利益が伸びない
    • DXを進めても現場が定着しない

    といった状況に直面することがあります。

    一つひとつの対策は間違っていないはずなのに、
    なぜ結果がついてこないのでしょうか。

    対策ではなく「構造」の問題

    このような場合、

    「対策が弱いのではないか」
    「実行が足りないのではないか」

    と考えがちです。

    しかし実際には、

    対策の問題ではなく、
    その前にある“前提のズレ”が影響している

    ケースが少なくありません。

    前提がズレたままでは、
    どれだけ対策を積み重ねても、
    結果は同じ方向に収束してしまいます。

    対策しても効果が出ない

    例えば、不良率が高い場合。

    一般的には、

    • 工程条件の見直し
    • 作業手順の改善
    • 設備の調整

    といった対策が行われます。

    しかし前提がズレていると、

    「改善しているのに変わらない」

    という状態になります。 原因が工程ではなく、
    設計や条件設定にある場合、
    工程をいくら改善しても効果は限定的です。

    部分最適が全体を悪化させる

    前提がズレると、

    部分最適が積み重なり、全体最適から離れる

    という現象も起きます。

    例えば、

    • 製造は作りやすさを追求
    • 設計は性能を優先
    • 品質は基準遵守を徹底

    それぞれは正しい取り組みですが、
    前提が揃っていないと、

    • コストが増える
    • リードタイムが伸びる
    • 手戻りが増える

    といった結果につながります。

    DXが「追加業務」になる

    DXにおいても同様です。

    • システムを導入する
    • データを可視化する
    • ツールを増やす

    しかし前提が整理されていないと、

    DXが業務改善ではなく「業務追加」になる

    という状況が生まれます。

    つまり、

    • 本来解決すべき問題が曖昧なまま
    • 手段だけが先行してしまう

    状態です。

    すべては「同じ構造」

    ここまでの現象は一見バラバラに見えますが、
    実は同じ構造を持っています。

    それは、

    前提がズレたまま、問題と対策が進んでいる

    という点です。

    この状態では、

    • 正しい対策をしてもズレる
    • 努力しても成果につながらない

    ということが起きます。

    前提が整うと何が変わるか

    では、前提が整うと何が変わるのでしょうか。

    最も大きな変化は、

    問題の見え方が変わること

    です。

    例えば、

    • 工程の問題 → 設計の問題
    • 作業の問題 → 情報の問題
    • 現場の問題 → 全体構造の問題

    といったように、
    「打つべき手」そのものが変わります。

    ズレは努力では埋まらない

    ここで重要なのは、

    前提のズレは、努力では解消できない

    という点です。

    むしろ、

    努力すればするほどズレが強化されることもあります。

    だからこそ、

    • まず立ち止まる
    • 前提を見直す
    • 問題を再定義する

    というプロセスが重要になります。

    さいごに

    不良、コスト、DX。
    どのテーマであっても、

    うまくいかないときは
    「対策」ではなく「前提」に目を向ける。

    それだけで、
    同じ状況でもまったく違う打ち手が見えてくることがあります。 前提を整えることは、
    遠回りのようでいて、
    最も本質的な改善への近道なのかもしれません。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

    「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
    製造業・DX・意思決定に関する情報を発信しています。

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  • なぜ製造業では前提がズレやすいのか ー 改善しても成果が出ない本当の理由

    なぜ改善しても変わらないのか

    製造業の現場では、日々さまざまな改善活動が行われています。

    不良低減、コスト削減、納期短縮。
    どれも重要であり、多くの企業が真剣に取り組んでいます。

    それにもかかわらず、

    • 改善しているのに成果が出ない
    • むしろ複雑になってしまう
    • 同じ問題が何度も繰り返される

    といった状況に直面することがあります。

    なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。

    その改善、本当に意味がありますか?

    解き方ではなく「前提」の問題

    こうした状況では、多くの場合

    「対策が足りない」
    「実行力が弱い」

    といった議論になりがちです。

    しかし実際には、

    問題の“解き方”ではなく、
    “前提”そのものがズレている

    ケースが少なくありません。

    ではなぜ、
    製造業ではこの「前提のズレ」が起きやすいのでしょうか。

    過去の成功体験が強い

    製造業は、長年の改善の積み重ねによって成長してきました。

    現場には多くのノウハウがあり、
    過去の成功体験が蓄積されています。

    これは大きな強みである一方で、

    「これまでうまくいっていた前提」

    が無意識に固定化される要因にもなります。

    環境や条件が変わっていても、
    前提だけが過去のまま残ってしまう。

    その結果、現実とのズレが生まれます。

    部分最適の構造

    製造業では、

    • 設計
    • 生産技術
    • 製造
    • 品質

    といった機能ごとに分業されています。

    それぞれの部門が最適化を進めることで、
    全体の効率を高めてきました。

    しかしこの構造は、

    「部門ごとの前提」がバラバラに存在する

    状態を生みやすくなります。

    例えば、

    • 設計は性能を重視
    • 製造は作りやすさを重視
    • 品質は基準遵守を重視

    といったように、
    同じ対象でも見ている前提が異なります。

    このズレが、意思決定のズレにつながります。

    KPIが前提を固定する

    もう一つの要因がKPIです。

    KPIは本来、活動を可視化し、
    改善を促進するためのものです。

    しかし一方で、

    「KPIそのものが前提になる」

    という現象が起きます。

    例えば、

    • 不良率を下げる
    • コストを削減する

    といった指標が絶対視されると、

    「それが本当に最適なのか?」
    という問いが生まれにくくなります。

    結果として、
    前提を見直す機会が失われていきます。

    前提は「見えない」

    ここまで見てきたように、

    • 成功体験
    • 分業構造
    • KPI

    といった要因が重なることで、
    前提は徐々に固定化されていきます。

    そして最も重要なのは、

    前提は普段、意識されない

    という点です。

    問題や対策は議論されても、
    その前にある前提は“当たり前”として扱われる。

    だからこそ、ズレても気づきにくいのです。

    前提を扱うということ

    では、どうすればよいのでしょうか。

    重要なのは、

    前提そのものを“対象として扱う”こと

    です。

    つまり、

    • 何を問題としているのか
    • なぜそれを問題とみなしているのか
    • その前提は今も有効なのか

    といった問いを持つことです。

    これは特別な技術ではなく、
    意思決定の一段手前に立ち返る行為です。

    ズレは自然に起きる

    製造業において前提がズレやすいのは、
    決して特別な問題ではありません。

    むしろ、

    • 強み(成功体験)
    • 構造(分業)
    • 仕組み(KPI)

    があるからこそ、自然に起きる現象です。

    だからこそ重要なのは、

    前提はズレるものだと理解し、
    意識的に見直すこと
    です。

    さいごに

    改善やDXに取り組む前に、
    一度立ち止まって前提を見直す。

    それだけで、
    同じ問題でも見え方が大きく変わることがあります。

    前提を整えることは特別なことではなく、
    意思決定の質を高めるための基本動作なのかもしれません。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

    「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
    製造業・DX・意思決定に関する情報を発信しています。

    VXtyleでは、そうした思考の整理を行っています。

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  • 意思決定は「前提」で決まる ー なぜ製造業では改善してもズレ続けるのか

    あなたは「何を問題とするか」を言語化できますか?

    現場の違和感

    製造現場で、こんな場面に出会うことがあります。

    「不良が出ている。だから対策を打つ」
    「コストが高い。だから削減する」
    「DXを進めるために、新しいツールを導入する」

    どれも正しい判断に見えます。

    しかし実際には、対策を打っても不良は止まらず、
    コスト削減をしても利益は思うように伸びず、
    DXを進めたはずなのに現場が混乱してしまう。

    なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。

    その問題、本当に問題ですか?

    原因は「問題」ではない

    こうした場面では、多くの場合
    「どう解決するか」が議論されています。

    つまり、

    • どんな対策を打つか
    • どのツールを使うか
    • どこを改善するか

    といった「解き方」の話です。

    しかし、ここに一つ見落とされがちな視点があります。

    それは、

    「そもそも、その問題の捉え方は正しいのか?」 という問いです。

    前提とは何か

    ここでいう「前提」とは、次のようなものです。

    • 何を問題とみなすのか
    • どこまでを対象とするのか
    • 何をゴールとするのか

    言い換えると、

    前提とは、意思決定の“土台”です

    この土台が曖昧なままでは、
    どれだけ正しい対策を打っても、結果はズレていきます。

    ズレた意思決定構造

    前提が整理されていない場合、意思決定は次のような流れになります。

    • 現象(不良・コスト増)
       ↓
    • 問題として認識
       ↓
    • 対策を実施
       ↓
    • しかし、期待した成果が出ない

    一見、論理的に見えますが、
    このプロセスには「前提」が存在していません。

    そのため、問題の捉え方自体がズレていると、
    その後のすべての判断がズレていきます。

    なぜ前提はズレるのか

    では、なぜ前提はズレてしまうのでしょうか。

    製造業の現場では、例えば次のような要因があります。

    • 過去の成功体験に引きずられる
    • 部門ごとに最適化されている
    • KPIが固定化されている

    こうした状態では、 「当たり前」と思っている前提そのものが
    見直されることはほとんどありません。

    前提を整えるとは何か

    では、「前提を整える」とは何をすることなのでしょうか。

    それは、

    • 問題の捉え方を見直す
    • 対象範囲(境界)を再設定する
    • 目的そのものを問い直す

    といったプロセスです。

    一言で言えば、

    問題を解く前に、“何を問題とするか”を整えること です。

    整えられた意思決定構造

    前提が整っている場合、意思決定は次のように変わります。

    • 前提の整理
       ↓
    • 問題の再定義
       ↓
    • 対策の設計
       ↓
    • 成果につながる

    この違いは小さく見えて、
    結果には大きな差を生みます。

    具体例(仮想ケース)

    例えば、不良率が高い製品があったとします。

    一般的には、

    「工程に問題があるのではないか?」
    と考え、工程改善に着手します。

    しかし前提を見直すと、

    • そもそも設計条件が適切だったのか
    • シミュレーションの前提条件が現実と合っているか
    • 品質基準の設定が適切か

    といった視点が出てきます。

    この場合、不良の原因は「工程」ではなく、
    設計や前提条件にあった可能性もあります。

    つまり、前提が変わると、
    打つべき対策そのものが変わるのです。

    意思決定の質は前提で決まる

    ここまで見てきたように、

    • 問題の解き方だけを議論しても
    • 前提がズレていれば結果はズレる

    という構造があります。

    逆に言えば、

    前提が整えば、意思決定の質そのものが変わる ということでもあります。

    さいごに

    製造業における改善やDXは、
    技術やツールの問題として語られることが多いですが、

    その前に、

    「何を問題とするのか」
    「何を目指すのか」

    といった前提を整理することが、
    実は最も重要なプロセスかもしれません。

    こうした“前提の整理”は、
    一人で行うのが難しい場面も多くあります。

    もしご関心があれば、

    「何が問題なのかがあいまいだ」と感じているテーマからでも、
    一緒に整理していくことが可能です。


    この記事を書いた人

    村上 亮
    中小企業診断士・ITコーディネータ

    「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
    製造業・DX・意思決定に関する情報を発信しています。

    VXtyleでは、そうした思考の整理を行っています。

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