なぜ価値判断の基準が変わるのか ~「知識」から「問い・判断・意味」へ~

なぜ「問い」が重要になったのか

「AI時代に必要なのは、問いを立てる力です。」

最近、
このような言葉を耳にする機会が増えました。

確かに、
その通りだと思います。

しかし、
私はその前に考えたいことがあります。

なぜ、
問いを立てる力が重要になったのでしょうか。

その理由を理解しなければ、
「問い」という言葉も一時的な流行語として終わってしまいます。

前回は、
AIができることが増えるほど、

「何をAIに任せるのか。」
「どこで人が判断するのか。」

といった役割の設計が重要になると考えました。

では、
その判断は何を基準に行うのでしょうか。

今回は、その背景にある、

「価値判断の基準」 の変化について考えてみます。

評価基準は時代によって変わる

私たちは普段、
「価値」という言葉を何気なく使っています。

しかし、
価値とは絶対的なものではありません。

社会が変われば、価値も変わります。

例えば、何百年も前。
本を持っていること自体が価値でした。
情報を得ることが難しかったからです。

その後、
インターネットが普及し、
情報は誰でも手に入れられるようになりました。

すると、
本そのものを持っていることよりも、

「必要な情報を見つけられる人」

の価値が高まりました。

そして今、
生成AIによって、
その評価基準が再び変わろうとしています。

「知っている」が価値だった時代

これまで、多くの場面では、

「知っている人」

が評価されました。

資格試験。
学校教育。
仕事。

どれも、

「正しい知識を持っていること」

が重要でした。

もちろん、
知識は今でも大切です。

AIを使うためにも、
その回答を評価するためにも、
基礎となる知識は必要です。

しかし、
AIは膨大な知識を瞬時に整理し、
提示できるようになりました。

さらに、
知識を提示するだけではなく、
それを使って分析したり、
文章を作ったり、
仕事を進めたりすることまでできるようになっています。

つまり、

「知っていること」だけでは、
以前ほど差別化になりにくい時代

になったのです。

AIは「知識」を民主化した

生成AIが普及して大きく変わったこと。

その一つが、

知識にアクセスし、
活用するコストが大きく下がったこと

です。

専門書を何冊も読まなければ入口に立てなかった分野でも、
AIに質問することで概要を知り、
学び始めることができます。

プログラミングも。
法律も。
マーケティングも。

以前よりずっと低いハードルで、
専門的な知識に触れられるようになりました。

これは、とても大きな変化です。

一方で、
誰もが知識へアクセスしやすくなるということは、

知識を持っていることだけでは差がつきにくくなる

ということでもあります。

では、
その先では何が評価されるのでしょうか。

評価されるのは「正解」ではなく「問い」

知識や答えの候補をAIが提示できるようになると、

「何を知っているか。」

だけではなく、

「何を知ろうとしているか。」

が重要になります。

AIにどんな質問をするのか。
何を解決したいのか。
何に違和感を持つのか。
何を疑うのか。

問いが違えば、
AIから得られる答えも変わります。

ただし、
ここで誤解してはいけません。

問いを立てれば、
それだけで価値が生まれるわけではありません。

重要なのは、

価値につながる問いを生み出せること

です。

問いの先には「評価」と「判断」がある

そして、
AI時代にはもう一つ重要なことがあります。

問いを立てると、
AIは多くの答えや選択肢を提示してくれます。

しかし、
選択肢が増えれば、
それだけで良い意思決定ができるわけではありません。

むしろ、

「どの案が妥当なのか。」
「何が抜けているのか。」
「この情報は信頼できるのか。」
「自分たちの目的に合っているのか。」

を評価する必要があります。

そして最後には、

「どれを選ぶのか。」

を決めなければなりません。

AIが答えの候補を増やすほど、

評価し、判断する力

の重要性も高まるのです。

ここで、
前回の「人とAIの役割を設計する」という話につながります。

何をAIに任せるのか。
AIの結果をどこまで使うのか。
どこで人が確認するのか。

それらもすべて、
評価と判断の問題だからです。

良い問いは、見方を変える

では、
価値につながる問いとは、
どのようなものでしょうか。

私は、

「答えを引き出す問い」

だけではないと思っています。

本当に価値のある問いは、

新しい見方を生み出す問い

です。

例えば、

「どうすれば業務を効率化できるか。」ではなく、
「この業務は本当に必要なのか。」という問い。

あるいは、

「競合に勝つにはどうすればよいか。」ではなく、
「競争しなくても価値を生み出せる方法はないか。」という問い。

問いが変わると、
見える世界も変わります。

もちろん、
AIも別の問いや新しい視点を提案してくれます。

しかし、その中から、

どの問いを深めるのか。
どの見方を採用するのか。

を選ぶのは、最終的には私たちです。

判断の先に「意味」がある

では、私たちは何を基準に選ぶのでしょうか。

そこには、

「正しいか。」

だけでは答えられない問題があります。

どの課題に取り組むべきか。
どの未来を目指すのか。
誰に価値を届けたいのか。
何を大切にしたいのか。

AIは、
こうした問いについても様々な選択肢を提示できます。

しかし、
どの選択肢に価値を見いだし、
自分たちの意思として選ぶのか。

そこには、
人間の価値観や目的が関わります。

つまり、判断の先には、

「何に意味を見いだすのか。」

という問いがあります。

だから私は、
AI時代に評価される人は、

「知識を持っている人」

だけではなく、

問いを立て、
AIが生み出した選択肢を評価し、
自分なりの意味を見いだして判断できる人

へと変わっていくのではないかと考えています。

さいごに

AIは、
多くの知識を誰もが使える社会をつくり始めています。

さらに、
答えを提示するだけではなく、
様々な仕事を支援し、
実行するようにもなっています。

だからこそ、
人間に求められるものも変わります。

知識を持つこと。

から、

何を問うか。

そして、

どう評価し、何を選ぶか。

さらに、

そこにどんな意味を見いだすか。

へ。

価値判断の基準が変わるとは、
単に「評価されるスキル」が変わるということではありません。

人間がどこで価値を生み出すのか、
その場所そのものが変わる。

ということなのではないでしょうか。

そして、
この変化は、
私たちの「考える」という行為にも影響を与えます。

答えを得るだけでなく、
問いを立て、
評価し、
選び、
意味を考える。

AIとの関係が変われば、
人間の思考のあり方も変わっていくはずです。

次回は、
「AIは思考をどう変えるのか」をテーマに、
AIを単なる便利なツールとは違う視点から考えてみたいと思います。


この記事を書いた人

村上 亮
中小企業診断士・ITコーディネータ

「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
製造業・DX・意思決定に関する情報を発信しています。

VXtyleでは、そうした思考の整理を行っています。

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