なぜシミュレーションは買っても使われないのか ー ツール不足ではなく、活用目的が曖昧なのかもしれない

導入時の期待と現実

製造業では、
シミュレーションソフトを導入したものの、
思うように活用できていない
という話を耳にすることがあります。

導入時には大きな期待がありました。
・品質を向上したい
・試作回数を減らしたい
・開発期間を短縮したい
・技術伝承に活用したい

しかし数年後、
「結局あまり使われていない」
「担当者しか触れない」
「ライセンス更新を続けるべきか悩んでいる」
という状況になることがあります。

なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

ソフトが悪いわけではない

よく言われる理由は、
・操作が難しい
・人材が不足している
・教育が足りない
といったものです。

もちろんそれらも一因かもしれません。

しかし私は、
もっと根本的な理由があると思っています。

それは、
活用目的が曖昧だからです。

例えば、設備投資であれば、
・品質向上
・コスト削減
・生産能力向上
など、比較的明確な目的があります。

しかしシミュレーションの場合、
「とりあえず導入してみよう」
という形で始まることがあります。

すると、何を成功とするのかが曖昧になります。

活用目的が曖昧になっていないか

例えば、
解析精度を高めることが目的なのか。
試作回数を減らすことが目的なのか。
技術伝承なのか。
設計品質向上なのか。

目的が曖昧なままでは、
活用方法も定まりません。

結果として、
解析は行われる。
レポートも作られる。
しかし意思決定には活用されない。

そんな状態が生まれます。

私は長年シミュレーションに携わってきました。

その中で感じるのは、
シミュレーションの本当の価値は、
計算結果そのものではないということです。

シミュレーションは知識化の道具である

もちろん、
結果予測は重要です。

しかしそれ以上に重要なのは、
・なぜその結果になったのか
・どの条件が影響したのか
・どのような仮説を検証したのか
を整理できることです。

つまり、
シミュレーションとは、
知識を見える形にする活動とも言えるのです。

例えば、
ベテラン技術者が持っている経験則を、
モデルとして表現する。
条件変更による影響を可視化する。
成功事例や失敗事例を蓄積する。

これらはすべて、
知識の構造化です。

私は、
シミュレーションの本質は
計算技術ではなく、
知識化にあると思っています。

そして実は、
これはDXにも共通しています。

DXが失敗するとき、
多くの場合、
システム導入そのものが目的になっています。

しかし本来は、
組織の知識を再利用できる形にすること
が目的のはずです。

シミュレーションも同じです。

ソフトを導入することが目的ではありません。
組織として学び続ける仕組みを作ることが目的です。

さいごに

もしシミュレーションが使われなくなっているとしたら、
ソフトそのものではなく、
私たちは何のために活用したかったのだろうか
という問いから見直してみる必要があるかもしれません。

ここまで、
改善
不良対策
会議
意思決定
属人化
シミュレーション
というテーマを見てきました。

一見すると別々の問題に見えます。

しかし実は、
そこには共通する構造があります。

次回はシリーズ最終回として、
「なぜ製造業では同じ問題が繰り返されるのか」
について考えてみたいと思います。


この記事を書いた人

村上 亮
中小企業診断士・ITコーディネータ

「問題を解く前に、前提を整える」をテーマに、
製造業・DX・意思決定に関する情報を発信しています。

VXtyleでは、そうした思考の整理を行っています。

VXtyleホームページ

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